• 2014.11.6

車椅子の利用をネガティブに感じるバス運転士は多いのか?

今日は度々話題となる「車椅子の路線バス利用」について書いてみたいと思います。

まず、車椅子をはじめ障害者を持たれている方への対応は「バリアフリー化や法整備が進んだ」と言っても、利用者・事業者・運転士によって現状の感じ方は様々だと思います。ですので、これから書く内容はあくまで個人意見としてご覧ください。

さて、私が路線バス運転士になった1年目。路線見習い(先輩と一緒に経路やバス停の位置などを学ぶ研修のこと)に入る前に、車椅子利用時の研修というのがありました。よく街中で”車椅子対応可”であることを示すロゴが入ったバスを見ると思いますが、一口に車椅子対応のバスと言っても、乗降方法もスロープ式であったりリフト式であったり、座席の収納方法、車椅子の固定方法も車種によって全く異なります。そのため、研修では車種ごとの取り扱いをロールプレイング形式で何度も繰り返し本番に備えたものです。

そして、ワンマンでの乗務が始まり、はじめての車椅子対応はとある路線の始発停留所でのことでした。この時、折り返し時間は10分近くあったのですが、はじめてのことで要領よくとはいかず作業に5分以上掛かり運転席に戻ると出発まで1-2分しかなかったのを覚えています。幸い降車も終点のバス停だったので特に車椅子の対応で遅延が生じるということは無かったのですが、乗務を終えて「疲れた」というのが本音ですね。

と言うのも、運転士は常にダイヤと安全運転のプレッシャーを感じながら運転しています。実際、車椅子の乗降があると作業時間に数分は掛かるのでダイヤに遅れが生じます。さらに、運転中は急ブレーキや右左折における車椅子の転倒事故を防止するために普段より慎重な運転になりますから、遅れたダイヤがさらに遅れ降車作業でもっと遅れる。そして、車椅子降車後のバス停から乗ってくる乗客は「車椅子の利用があったから遅れた」という実情を知らないので、遅れてきたバスにイライラとなり運転士のプレッシャーは増します。このあたりは運転士でない方も想像できるのではないでしょうか。

しかし、あまり知られていないプレッシャーに「乗降時のリスク」があります。例えば、バスポケット(駐車スペース)があれば後続車にも影響はないのですが、片側一車線でバスポケットの無いバス停での乗降は後続車のこともあり時間との闘いです。そんなプレッシャーの中、雨でも悪路でも転倒しないよう慎重に乗降作業を行わなければいけないというリスク(万一、転倒事故となれば責任が生じます)も運転士は追うわけなので、正直、車椅子の利用を快く思わない運転士が多いように感じます。

ちなみに私自身は車椅子の方をバス停で見ると「おっ!」となりますが、逆にスピーディーに乗降できるよう段取りを考えます。もちろん、乗降時や運転時の安全は最優先ですので手順は省略しません。ただ、私の場合は前職がウェディングプランナーで、サービス業かつ車椅子の利用も頻繁にあった環境出身ですので、世間で言われるほど拒絶反応(失礼な言い方ですが)は無いと自分では思っています。

しかし、運転士の生い立ちや路線環境はそれぞれです。それ故、快く思っていない運転士がいるのも事実で「車椅子の乗客が乗車拒否された」「バス停にいるのに無視して出発させた」など度々ニュースになることもあります。また、乗客の中にも座席を譲ることや遅延で乗り継げる電車に乗れなかったことへ嫌悪感を示す乗客もゼロではありません。

ただ、車椅子の方が乗車中の車内で「車椅子の利用があり遅れました!」と平然とアナウンスすることは障害者の立場だとどうなのでしょう。ちなみに、ウェディングの現場だとゲストの肩身を狭くさせるような言動はNGだったこともあり、私はこのようなアナウンスはせず状況に委ねますが、公共交通での感じ方は人それぞれなので賛否両論があるデリケートな問題だと思います。

現在、日本では「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称・バリアフリー新法)が2006年に施行され、ノンステップバスの導入や乗務員研修などを行うことなど努力義務を明記しています。

▼以下引用

第8条(公共交通事業者等の基準適合義務等)

(中略)

3 公共交通事業者等は、その事業の用に供する旅客施設及び車両等(新設旅客施設等を除く。)を公共交通移動等円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
4 公共交通事業者等は、高齢者、障害者等に対し、これらの者が公共交通機関を利用して移動するために必要となる情報を適切に提供するよう努めなければならない。
5 公共交通事業者等は、その職員に対し、移動等円滑化を図るために必要な教育訓練を行うよう努めなければならない。

しかし、このようにような法律はあるものの、最終的には事業者・運転士・利用者の意識やマナーに委ねられる部分も大きいと思いますのでまだまだ課題は多いように感じます。

最後に私見となりますが、車椅子の利用者であっても健常者と同様の移動権(交通権)はあるのは理解できます。しかし、車椅子の利用については技術的な対応が進んでも、健常者側の意識が追い付いていないのが現状だと思います。それを促す法整備が進んでいることは良としても、路線バス以外にも移動手段を確保する福祉環境の整備、路線バスに絞れば運転士の負担を軽減するような対策や工夫も考えていかないと、人材難が叫ばれるバスの運転士事情が改善することはなく、表面上はともかく車椅子の利用に対してネガティブな印象は正直払しょくできないように思います。

「車椅子の利用も当たり前」というのが社会福祉の理想だとは思いますが、日本は中負担・中福祉と言う”中間”を行く福祉政策の国ですから、高福祉の社会環境になるには事業者やバス運転士に対応を委ねるのは限界だと思いますがいかがなのでしょう。ただ、さすがにそれは極論としても、事業者・運転士・行政・障害者・利用者の相互理解が得られる地域に密着した路線バスであれば難しく考えなくても良いのかもしれません。

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